浄土真宗の教え1(星)
親鸞聖人と言えば、歎異抄(たんにしょう)の悪人正機があまりにも有名であり、親鸞聖人の教えの核心を悪人正機であると思われている方も多いのではないかと思います。
ご存じない方の為に現代語訳を引用させて頂きます。
あるとき、親鸞さまは、こう言われた。
善人ですら救われるのだ。まして悪人が救われぬわけはない。
しかし、世間の人びとは、そんなことは夢にも考えないし、言わないはずだ。
「あのような悪人ですら救われて浄土に往生できるというなら、善人が極楽往生するのは極楽往生するのはきまりきっていることではないか」
こういうところが、普通一般の考えかただろう。
そのようなことばは、なにげなく聞いていると、理屈にあっているように思われないでもない。だがあらためて阿弥陀仏の深い約束の意味を考えてみると、仏の願いにまったく反していることがわかってくる。
というのは、いわゆる善人、すなわち自分のちからを信じ、自分の善い行いの見返りを疑わないような傲慢な人びとは、阿弥陀仏の救済の対象ではないからだ。ほかによるものがなく、ただひとすじに仏の約束のちから、すなわち他力に身をまかせようという、絶望のどん底からわきでる必死の信心に欠けるからである。
以下省略
歎異抄の謎 親鸞をめぐって・「私訳 歎異抄」・原文・対談・関連書一覧 五木寛之著 祥伝社 P66-67
この悪人正機は数多く取り上げられていますので、管理人が改めて解説する必要もないと思います。
検索されれば、簡単に解説が見つかります。
親鸞聖人の思想を代表するかのような印象のある悪人正機ではありますが、悪人正機を取り上げている歎異抄(たんにしょう)は親鸞聖人の思想を体系的に説いたものではなく、弟子が異端を戒めることを目的に書かれたものです。
そのため、歎異抄(たんにしょう)を読むことで親鸞聖人の教えを理解するのは、少しばかり危険ではないかと思います。
そこで今回は、親鸞聖人の教えとは何かを「図解雑学 親鸞」から引用しながら簡単に解説したいと思います。
親鸞聖人の教えが体系的に説かれているものと言えば、『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』があります。
正式な名称は、顕浄土真実教行証文類(けんじょうどしんじつきょうぎょうしょうもんるい)であり、親鸞聖人の解釈とその根拠として経典や注釈書を引用で構成されています。
親鸞の教えを、今日「浄土真宗(じょうどしんしゅう)」という。浄土真宗の教えのすべては、『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』に書き残されている。では『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』には何が書き残されているのだろうか。
『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』は、「三重廃立(さんじゅうはいりゅう)」を明らかにしたものといわれる。三重廃立(さんじゅうはいりゅう)以外に教えはない。「廃立」の「廃」とは「捨てもの」ということであり、「立」とは「拾いもの」ということである。
弥陀(みだ)の本願に救われて絶対の幸福を獲得するには必ず、この「捨てもの」と「拾いもの」を正しく知り、捨てるべきものは速やかに捨て、拾うべきものは速やかにとらなければ、絶対に救われないということである。この「捨てもの」と「拾いもの」に三種類あると教えたのが、三重廃立(さんじゅうはいりゅう)である。
図解雑学 親鸞 ナツメ社 P112
三重廃立(さんじゅうはいりゅう)
内外廃立(ないげはいりゅう)
〇仏教
×仏教以外の教え
仏教以外の教えでは絶対に本当の幸せにはなれない。仏教を信じなさい。
※内外廃立(ないげはいりゅう)とは「内道外道廃立(ないどうげどうはいりゅう)」のことです。
聖浄廃立(しょうじょうはいりゅう)
〇浄土仏教
×聖道仏教
聖道(しょうどう)仏教では助からない。浄土仏教に帰依しなさい。
真仮廃立(しんげはいりゅう)
〇真実の浄土仏教
×仮の浄土仏教
仮の浄土仏教を捨て切って、浄土真宗の教えを信じなさい。
図解雑学 親鸞 ナツメ社
管理人が改めて解説する必要もないとは思いますが、浄土真宗の教えこそが本当に救われる教えであることを論証するために書かれた内容であると思われます。
尚、顕浄土真実教行証文類は岩波文庫から出版されていますが、文体が古くてお手上げでした。
本願寺出版社から現代語訳が出版されていますので、原文を読まれるのであならば、こちらがお勧めです。
顕浄土真実教行証文類 上・下(文庫版) 本願寺出版社
定価 1500円+税
星
at 09:16, 星 良謙・子授け地蔵, 仏教
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